開発の経緯
アミロペイブ®開発の背景についてご紹介します。
アミロイドーシスは、ミスフォールディングを起こした前駆タンパクが、特有のβシート構造に富むアミロイド線維を形成し、全身のさまざまな臓器に沈着することで機能障害を引き起こす疾患の総称である1)。複数の臓器にアミロイドが沈着する場合は「全身性アミロイドーシス」と呼ばれ、その中でも全身性ALアミロイドーシスは、異常形質細胞より産生される単クローン性免疫グロブリンの軽鎖に由来するアミロイドタンパクが全身諸臓器に沈着して臓器障害を引き起こし、死に至ることもある予後不良の重篤な疾患である。また、由来する免疫グロブリン軽鎖(AL)にはλ鎖とκ鎖のサブタイプがあり、ALアミロイドーシス患者の約8割がλ鎖由来のλ型であり、κ型は約2割との報告がある2)。
全身性ALアミロイドーシスに対する現在の治療は、遊離軽鎖のサブタイプ(κ型、λ型)にかかわらず、形質細胞異常症(PCD)療法のダラツムマブ+シクロホスファミド+ ボルテゾミブ+ デキサメタゾン(DCyBorD)療法が推奨されており、ダラツムマブが承認されていない国ではシクロホスファミド+ ボルテゾミブ+ デキサメタゾン(CyBorD)療法が標準的に実施される。しかし、これらの治療法によって血液学的奏効*は認められるものの、既に沈着したアミロイド及びその臓器障害に対する直接的な効果は確認されていない3)。また、予後が極めて不良なMayo Stage IIIb の患者でのベネフィットを示すデータは得られていない3)。このように、全身性ALアミロイドーシスの標準治療におけるアンメットメディカルニーズが存在していることから、新たな治療薬の開発が望まれていた。
アミロペイブ® 点滴静注300mg(以降、アミロペイブ。一般名:アンセラミマブ[遺伝子組換え]。以降、アンセラミマブ)は、アミロイド線維のミスフォールドした軽鎖を標的とするキメラ型免疫グロブリン(Ig)G1κモノクローナル抗体である4)。アミロペイブの親抗体であるマウスIgG1κ抗体m11-1F4 は、変性ヒトκ4 型Bence Jonesタンパクを免疫原として作製され、非天然構造をもつκ及びλ型軽鎖タンパクのN 末端に位置するエピトープに結合することが示されている5)。さらに、アミロペイブが軽鎖に結合すると、Fcγ受容体を介したアミロイド線維の食作用が増加することが報告されている6)。
上記の薬理学的作用に基づき、全身性ALアミロイドーシス患者を対象にアミロペイブの2 つの国際共同第III相試験であるCAEL101-301 試験及びCAEL101-302 試験を実施し、PCDに対する標準治療下でアミロペイブを投与したときの有効性及び安全性をプラセボと比較した7-9)。当該2 試験のデータを併合してCARES 試験として主解析を実施した結果、主要評価項目は達成されなかったものの、事前に規定したサブグループ解析でκ型患者に対するアミロペイブの有効性及び安全性が確認された結果、承認された7-9)。アミロペイブは、アミロイド線維のミスフォールドした非天然構造をもつκ及びλ型軽鎖タンパクのN 末端に位置するエピトープに結合するが、最近の非臨床データではナノモルの親和性でκ型線維に結合し、κ型線維の食作用を増強する一方、λ型線維への結合はより弱く、in vitro で食作用の増強は認められないことが示唆されており、上記臨床試験の成績は非臨床データと一致した傾向の結果であった4)。
なお、アミロペイブはCaelum Biosciences 社が創薬し、本邦での開発及び販売はアレクシオンファーマ合同会社が行うこととなった。
* FLC量及び比の正常化、免疫固定法による検査で血清と尿中のM蛋白がともに消失(iFLCが基準値上限未満、及び免疫固定法による血清と尿の検査結果が陰性である場合は、CRの条件としてuninvolved遊離軽鎖及びFLC比の正常化はいずれも必要ない)
1) 日本循環器学会(編). 2020 年版心アミロイドーシス診療ガイドライン. p.11. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2020_Kitaoka.pdf ( 2026年8月参照)
2) Staron A, et al. Blood Cancer J. 2021;11(8):139.(PMID: 34349108)
3) Kastritis E, et al. N Engl J Med. 2021;385(1):46-58.(PMID: 34192431)[COI:著者のなかにはAlexion Pharmaceuticals, Inc. 及び AstraZeneca plc. 、CaelumBiosciences, Inc.より謝礼を受領している者が含まれる。]
4) 社内資料:効力を裏付ける試験(CTD 2.6.2.2、承認時評価資料)
5) O’Nuallain B, et al. Biochemistry. 2007;46(5):1240-1247.(PMID: 17260953)
6) Costello M, et al. Blood. 2023;142(Supplement 1):3307-3308. [ COI:著者のなかにはAlexion Pharmaceuticals, Inc. 及び AstraZeneca plc. の株式を保有する社員が含まれる。]
7) 社内資料:臨床的有効性の概要(CTD 2.7.3.2、承認時評価資料)
8) 社内資料:臨床的安全性の概要(CTD 2.7.4.2、承認時評価資料)
9) Wechalekar AD, et al. J Clin Oncol. 2026;44(20):1899-1910.(PMID: 42212672)[COI:本研究はAlexion Pharmaceuticals, Inc. 及び AstraZeneca plc.、CaelumBiosciences, Inc.より資金的支援を受けた。著者のなかには同社よりコンサルティング料等受領している者、同社の株式を保有する役員が含まれる。]
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